NPO法人 彦根景観フォーラム

彦根まちなか見聞録 昭和30年代の写真が描く過去と未来

それぞれの彦根物語69 平成21年11月14日(土)

 「うるわしき湖国よ永遠に」  琵琶湖博物館ギャラリー展から
          大橋 洋(親子二代のアマチュア写真家)


d0087325_14135358.jpg 写真は、流れていく時間の一瞬を切り取る。その魅力は、撮影者が最も美しいと感じる瞬間を記録する点だ。だからこそ、写真には記録以上の共感がある。どんな角度で、どこの位置から、どんな構図で何を狙って、何を残そうとしたのかが伝わってくる。

 彦根在住の大橋さんは、お父さんの宇一郎さんの撮り溜めた膨大な写真を整理し、自らもその場所に行って現在の様子を撮影した。そして、定年後に滋賀県立琵琶湖博物館の「はしかけ」(ボランティア学芸員)となり、2008年9月~11月まで「うるわしき琵琶湖よ永遠に-父子の見た湖国」というギャラリー展示を博物館で行った。
 今回の彦根物語ではその中から主なものを選んで紹介された。 長曽根の湖岸、彦根港-松原回転橋、松原浜、彦根駅前、銀座街、昭和新道付近などを中心に、主に昭和30年代と現在の写真を比べつつ、参加者から思い出や写っている人物についての情報を聞かれた。

失われた撮影ポイント
 大橋さんによると、かつて父が撮影したであろう地点を探して行ってみると、撮影場所自体が消えてしまっていることが多くあるという。長曽根の長い砂浜は、貸ボートやヨットでにぎわったが、今は湖岸道路敷になっている。市営国民宿舎「湖城荘」前に広がる湖岸は埋め立てられて、ホテルなどが建っている。佐和山を背景とした松原内湖で舟遊びをする子ども達を撮った場所も失われている。

湖と人
 白黒写真を見ていて、まず気づくのは「湖と人との近さ」だ。伊勢湾台風の後に砂浜に打ち上げられた流木を拾い薪にする人々、小中学校の水上運動会、地引き網漁、えり漁、シジミ漁、砂浜で若い女性達が綱引きをしたり、ファッションショーが催されたり、遊覧船で竹生島観光から彦根港に帰ってくるデッキ一杯の人々。湖は仕事の場であり、生活の場であり、学びの場であり、娯楽の場であったのだ。現在ではほとんど人はいない。したがって、写真も平板になり、おもしろくない。
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まちなみとこども達
 町並みが、都市計画道路によって暴力的に変わっていく過程も記録されている。ある商店の昭和30年代の白黒写真と現在の一見モダンな看板建築に覆われた店舗を見比べると、かつての重厚な店舗に戻した方がずっと人気が出るのではないかと思われた。
 子ども達も粗末な衣服であるが道路でさまざまな遊びをしている。コマ回しやたこ揚げ、獅子舞のまね、魚とり、ザリガニつかみ、ひなたぼっこ、大根を干す「はさ」組みに登るなど、子ども達だけの集団で生き生きと身体を使っている。こんな風景は最近めったに見られない。

現在から未来へ
 最後に、大橋さんは気になることを言った。私が死ぬときあの世に持って行くものは、私が撮った写真ではなく親父が撮った写真だと。たしかに、生き生きとしたすばらしい写真だが、それだけでいいのだろうか。
 私は、写真は過去から現在へ、現在から未来への贈り物だと思う。これらの写真は、大橋宇一郎さんから私たちへの素敵なメッセージが込められたプレゼントだと思う。それを受け取り、どう活かすのかは、私たちの世代の責任ではないだろうか。 (By E・H )
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by hikonekeikan | 2009-11-21 14:25 | 談話室「それぞれの彦根物語」
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