NPO法人 彦根景観フォーラム

愛をもって彦根の観光まちづくりを語る

【彦根物語76】
 「彦根市観光の現状と今後
    ~3年にわたる経済効果測定調査から」 
 
                          得田 雅章 (滋賀大学経済学部准教授)

愛があふれる
d0087325_21212077.jpg 梅雨明けの花しょうぶ通りには、雲の間から時々強い日差しが差し込んでいた。
 町屋を再生した寺子屋力石に入ると、講師の得田先生と2人の滋賀大学の先生が並び、彦根市役所、商工会議所、観光ボランティアガイド、商店街連盟、郷土史家、議会議員、滋賀大学学生、滋賀県立大学学生、花しょうぶ通り商店街の人達、NPOメンバー、東京からきた会社員などで満員だった。
 なんとか隅の椅子に腰をおろして発表を聞いた。そして、発表が終わったときには一種の満腹感で満たされてしまった。
 「愛をもって語る」と予告にあったが、イラストを加え作り込んだスライド、分かりやすいデータ表現、クイズ、数々の提案とその経済効果を数値で表現するなど、まるで愛情一杯の手作り料理をお腹いっぱい食べたような感覚を味わった。

彦根観光の「いま」
 内容を要約しよう。この調査は平成19 年の彦根城400年祭から3年間実施された。この結果から、次のことが分かった。

 ①一人あたりの観光客の消費額はH19年、H20年と伸びたが、H21年はガクンと下がった。大きな原因は客数ではなく客単価の減少で、不況の影響と思われる。
 ②H21年の観光消費額は108億円で、経済波及効果は211億円、1200人の雇用を支えた。波及効果は400年祭が開かれたH19年の494億円から比べると4割に減少した。それでもH11-18年平均に比べると消費額で42億円、波及総額で82億円の増加になり、市民一人あたり消費額で3.8万円、波及総額で7.5万円の増加となる。レベルが上がったといえる大きな経済効果だ。
 ③観光客数は、春・秋・夏の順で多く、冬が少ない。また日帰りが7割で土日祝日の客数が多い。近畿圏が中心で、家族・少人数旅行が多い。
 ④初めて訪れる人が約4割あった一方、10回以上のリピーターが10%にのぼった。リピートする魅力がある町なのだ。

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これができれば、100億円
調査から作ったモデルをもとに、得田先生は、対策ごとに波及効果を試算した。

 ①基本周遊ルートである彦根駅→彦根城→キャッスルロード→四番町スクエア→彦根駅で、帰り道にあたる立花町や京町などのルートを充実させると、日帰り客の飲食費が1.5倍に、日帰り客の3%が宿泊に移行する。41億円の増加。
 ②①の四番町から、足軽辻番所→芹川→花しょうぶ通り→ひこね芹橋駅→彦根駅と発展ルートを開発すると日帰り客の飲食費が2倍に、日帰り客の5%が宿泊に移行する。74億円の増加。
 ③ご当地グルメ、お土産などの独自商品開発をすると飲食費とお土産購入費が1.5倍に増加。50億円の増加。
 ④平日観光キャンペーンで、平日の宿泊客が10%増加、日帰り客が10%増加。9億円の増加

 これをみると、ご当地グルメ、独自お土産開発が実行が容易で効果が高いことがわかる。そして、周遊ルートの充実・発展を並行して進めれば、たとえ観光客数が増えなくても100億円~150億円の波及効果が生まれる。ゆっくりと楽しい時間を消費する人々の姿が見えてくる。

ひこにゃんの今後は?
d0087325_21294547.jpg 次は、ひこにゃんだ。ひこにゃんグッズの売上げは、400年祭のH19年が17億円、H20年が10億円、H21年は8億円となった。減ってはいるが根強い人気だ。購入者は10代、20代で同年齢層の4割を越えるが、他の年齢層も3割後半で大きな差はない。平均購入額は1,100円~1,500円。ひこにゃんはイベントとともに去るキャラクターではなかった!
ゆるキャラ人気No.1のひこにゃんのグーグル・キーワード検索のヒット数は約70万件、しまさこにゃんは約30万件、いしだみつにゃん約5万件だった。しまさこにゃん、いしだみつにゃんが健闘している。彼らを生み出した花しょうぶ通りの人々の心をグッとつかまえた。d0087325_21253477.jpg


観光まちづくりの仕組みづくり
 きちんとした調査にもとづく実証分析は、的確な打ち手を導く。観光施策は、誰もが意見をいい、どれも良さそうに思えるだけに、経済効果と実現性を評価して実践に移すことが必要だ。その意味で得田先生たちの貢献は大きい。d0087325_21255615.jpg

 得田先生は、短期・中長期の課題を整理し、彦根ブランドの創出・確立、観光客誘致の分散化、まちのテーマパーク化などを提案された。
 問題は実行だ。聴衆の意見でも市の観光担当者に実行を望む声が多かった。もちろん、観光担当部局だけで実現するものでなく、総合的なまちづくりの戦略として取り組まなければならない。
 しかし、誰がリーダーシップを取って、市役所、商店街、観光事業者、NPOなどの力を結集し、コーディネートして新しい観光まちづくりを進めていくのか。この点が欠けていたのが、これまでの彦根だった。今回は、その明確な仕組みが作れるのか注目したい。
 
 ひこにゃん、しまさこにゃん、いしだみつにゃんができて、彦根グルメができないはずがない。グルメ・ベンチャー・横丁があってもいい。彦根の底力を私も信じている。     ( By E.H.)


8月、9月の彦根物語はお休みです。
次回は、彦根物語77 10月16日(土)10:30~ @寺子屋力石
 中世の笑い -フランスのファルス(笑劇)の世界と狂言の世界-
  小澤 祥子さん(関西大学フランス文学博士) です。お楽しみに。

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by hikonekeikan | 2010-07-28 21:52 | 談話室「それぞれの彦根物語」
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