NPO法人 彦根景観フォーラム

彦根景観シンポジウム 今井町の歴史的まちなみの保存と再生に学ぶ

特集:彦根景観シンポジウム2012
       彦根・芹橋地区のまちづくりに向けて (1)


橿原市今井町の歴史的まちなみの
               保存と再生に学ぶ



 2012年3月20日(祝)、彦根景観フォーラム、辻番所の会、芹橋まちづくり懇話会は、11時より芹橋地区で特別公開中の足軽屋敷や路地の見学会を行った後、13時より四番町ダイニング3Fホールで彦根景観シンポジウム2012を開催しました。

 今回は、奈良県橿原市今井町から3名の講師を迎え、歴史的な資産の保存と住民のくらしの共存、まちの防災や活性化、空き家問題への対応などについて議論を深めました。2回にわたって、そのポイントをお伝えします。
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一歩踏み出そう、芹橋まちづくり

                 彦根景観フォーラム理事長 山崎 一眞 

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 芹橋は、旧彦根藩最大の足軽組屋敷地であり、歴史を感じさせる閑静な住宅地です。彦根市の中心部に位置し、買い物や生活に便利だが、路地がせまく車の利用には適していません。中心市街地の例にもれず人口減少・高齢化が著しく、1977年の1,234人が2008年には700人に、高齢化率は彦根市の18.7%に比べ芹橋は36.4%となっています。
 足軽屋敷の数は、1966年の158件が2007年には30件に激減。町並みは、空き家や空き地、青空駐車場が増え、周囲の町なみとは場違いな建物も増えて、歴史的な景観が損なわれています。

 足軽屋敷を保存し、歴史的町並みと路地を再生しつつ、安全で若者も喜んで住む町にできないか。前回の彦根景観シンポジウムでは、次のような町づくりの方向が明らかになりました。d0087325_1528357.jpg 

 ①芹橋の町並みは、路地を挟んで塀があり、少し後に建物がたち、間に庭があって緑が見える建て方でつくられている。この歴史的な建築ルールを守る住民協定が必要。

 ②4m未満の路地の維持は、都市計画法第42条の3項道路の適用で実現が可能。

 ③住民による自主防災の仕組みづくりが前提。

 この建築ルール/路地の維持/防災の仕組みをセットで合意できれば、少子高齢化、脱クルマ時代のまちづくりのモデルになると評価されました。
 シンポジウムを受けて芹橋で防災図上訓練を実施したところ、今の準備状況では震度7の地震に対処できないことがわかり、対応策を模索しました。

 芹橋の歴史的な建物と町なみの再生、防災性の向上をどう進めるか? 今日は、先進地の橿原市今井町のハード、ソフトの経験をお聞きして、住民、行政、NPOの皆さんと議論したいと思います。


今井町伝建地区の制度と事業

                 今井町並保存整備事務所長 田原 勝則さん

d0087325_11435897.jpg 行政の立場から、ハード整備を中心にお話しします。

 今井町の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)は、東西600m、南北310m、面積17.4haで、ここに重要文化財が9件(寺社1、民家8)、県指定文化財2件、市指定文化財5件、伝統的建造物504件があります。芹橋より少し広いくらいの通りがあり、昭和30年代から10回以上、建物や町並みの本格的調査が行われています。

 今井町のまちづくりの理念は、文化財としての歴史的町並みと住民生活の共存により、活気のあるまちをつくり、街並みを未来に残していくことです。

d0087325_15402325.jpg 伝統的建造物群保存地区(伝建)制度は、市からの申出により選定され、建物の修理、修景等の経費の一部が国から補助されます。この指定を受けるため、橿原市は伝建地区保存条例(H1.9.27)を制定し、保存計画の策定、現状変更行為の制限と許可基準、経費補助、伝建地区保存審議会設置を定めました。
 ところが、住民の意見が二つに分かれ、都市計画決定(H5,3)までに5年かかりました。この時、住民意見を調整するために市が「今井町町並み保存住民審議会」を設置しました。地区の各組織・団体の代表、学識経験者で構成し、保存計画、現状変更行為、許可関連、整備事業を審議し、市および伝建地区保存審議会に建議します。

d0087325_15375043.jpg 建物の保存・修理については、伝統的建造物の外観を保存する修理・復旧で4/5、非伝統的建造物では外観を伝統的建造物と調和するような修景で1/2、2/3、新築の場合1/3が補助されます。22年度末までで262件、総事業費47億円のうち11億円を補助しています。このほか、伝建地区における建築基準法の制限を緩和するとともに、家屋、土地の固定資産税を軽減しています。

d0087325_15385258.jpg 住環境整備事業(町なみ環境整備事業)は、住環境としての道路が狭い、公園・緑地が少ない問題に対処して、歴史的資産の保存と住環境の改善の両立を図るもので、①道路の美装化、②電線等の地中化 ③旧環濠の整備(復元)、④公園・生活広場・防災施設(防火水槽、防災倉庫、便所を併設した休憩施設)の整備、⑤今井景観支援センター(町屋を改修し東側を見学拠点、西側を事務所に活用)、今井まちづくりセンター(地区住民の交流の場、体験型見学施設)の整備、d0087325_1546887.jpg⑥伝統的建造物以外の建物の修景、屋外設置物、生垣の整備、⑦照明などのストリートファニチャーの整備を行っています。
 総事業費 29億円で、H22年度末で24億円の進捗です。最近、交通広場予定地から昔の環濠が発掘され、復元すべく調整しています。

 これらの公園や防災施設、センターを管理し活用していただいているのが、地域防災会や「今井町並み保存会」、「NPO今井まちなみ再生ネットワーク」、「今井町区域街並み環境整備協議会(大工さん達の勉強会)」で、活発に活動いただいています。


今井町町並み保存会の活動

               今井町街並み保存会会長 若林 稔さん

d0087325_1144336.jpg 最初にお断りしますが、私の意見が今井町の住民の意見とはいえません。まちづくりには様々な意見があり、一本化はできません。私という人間が会長に推されていると考えてください。私は、今井町に生まれ、近畿日本鉄道(株)で広報や都市計画、美術館の仕事を担当、平成8年から街並み保存に関わり、今井宗久を提唱。14年から茶行列等のイベントを企画して本格的に参加した人間です。

 今井のまちづくり第1期は「町並み保存のパイオニア」の時代です。昭和30年代から少数の住民リーダーが町並み保存運動を引っ張り、昭和49年、今井、妻籠、有松で「街並み保存連盟」を結成、昭和53年には町を保存してほしいという陳情から始まり「今井町保存問題に関する総合調査対策協議会」(住民協議会)を作り、昭和63年「今井町街並み保存会」に名称を変更、伝建地区保存条例の制定に結び付けました。その道は住民がもがき苦しんできた汗と涙の成果であり、決して恵まれていたわけではありませんでした。

d0087325_15425190.jpg その後、行政によるハード面での保存が軌道に乗りだすと現在までの第2期が始まります。住民が行政に陳情する受け身の立場から能動的な動きに変わり、イベントの導入と拡大、海外や子供たちへの啓もうと日本文化継承への広がりをめざしています。 (次回につづく)
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by hikonekeikan | 2012-05-13 10:58 | フォーラム
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