NPO法人 彦根景観フォーラム

2010年 12月 24日 ( 1 )

若者はまちぐらしが好き! 若者集団と地元団体と大学が手を結ぼう

d0087325_1020191.jpg若者はまちぐらしが好き! 若者集団と地元団体と大学が手を結ぼう

 若者に“まちぐらし”を    吉田玲奈(よしだ れな)さん

   第17回足軽辻番所サロン芹橋生活
   11月21日(日)10:00~ 足軽屋敷中居邸



 寒い、暗い、不便、プライバシーが守れないと否定的に考えられてきた木造の町家。若者はワンルームマンションでないと住んでくれないとばかりに、彦根市芹橋地区でも多くの町家が壊され集合住宅や駐車場に変わっている。
 だが、当の若者達はどう思っているのだろうか。

まちぐらし集団CHOBO
d0087325_1115649.jpg 吉田玲奈さんは、滋賀県草津市生まれ。京都建築専門学校建築科、伝統建築研究科を卒業し、現在は京都建築専門学校よしやまち町家研究室主任研究員で、二級建築士事務所「日暮手傅舎」の代表、さらに京都銭湯部の部長でもある。
 一緒に来られた中村侑介(ゆうすけ)さんも、東京の大学を卒業後、京都建築専門学校で学んだ若者で、二人はまちぐらし集団「CHOBO」(ちょぼ)のメンバーだ。


 CHOBOは、京都市文化財マネージャー育成講座一期生の若者4人で結成された「若者による若者ためのまち暮らしを提案・応援・発信する」集団で、まち暮らしを「町暮」(CHOBO)とタイトル化し、「若者が地域に参加しながら町家暮らしを楽しむライフスタイル=まち暮らし」としている。
 (http://chobo.kyotolog.net/)

ワンルームの孤独
 吉田さんは、「まちづくり」には「上から目線」を感じるという。そこで、水平目線で、まず自分たちでまちに住んでみて、若者が地域に根付きながら町家暮らしを楽しむライフスタイルから「まちづくり」をはじめた。キーワードは「若者」だ。
 京都には学生が多い。しかし、古い町には若者が住んでいない。京町家に惹かれ住みたい若者は多いが、現実はワンルームマンションしか選択肢がない。そして、ワンルームの現実は、孤独な「部屋暮らし」である。学校とバイト先あるいは職場以外の「人とふれあえる居場所」が欲しいと思っている。
 ところが、空き町屋は、不動産業界や大家さんにとっては“お荷物”扱いだ。古いので手がかかる、低家賃しかとれない。したがって、賃貸市場に出てこないのだ。

町家の魅力・まちぐらしの魅力
d0087325_10255577.jpg 吉田さん達には、町家は「シンプルで洗練された造りの素直な建築」と映る。特に、傷みが発見しやすく直しやすい、指導を受ければ住み手が参加して補修できることが大きな魅力だ。これに対して現代住宅は、厳密な構造計算や品質管理を前提にして、住み手が補修に参加することを想定していない。
 また、改修の過程で職人の技と知恵に触れられること、木、土などの自然素材だけで美しい家が造れるおどろき、素材のすべてが再利用できる究極のエコ住宅であること、6~7万円で広い家が2人でシェアできることなども魅力だ。そして最大の魅力は、町家に住むことでまちの人と仲良くなれることだ。

地域の一員になれる町家の力
d0087325_10272250.jpg 吉田さんが、CHOBOのメンバーが借りている町家を紹介してくれた。
 京都市下京区の伝統木造二階建町家、庭付きで風呂なし。二人でシェアしている。この町家は、自分たちで改修し自己負担20万円、大家負担20万円となったが、敷金、礼金なしで、決して高くない。
 ここでは、早朝の路地の清掃と水まき、夜には火の用心の拍子木を鳴らす当番が6日に1回まわってくる。地域の役割をもつことで、地域の一員になり住民とのふれあい、顔のわかるおつきあいができるようになり、自治会の運動会や地蔵盆にも参加している。これが町家の最大の力だ。
 中京区のY邸。伝統木造平屋建で風呂なし。家賃4万円で、2人でシェアしている。ここは、傷みが激しく壊して駐車場にしたいが壊すにもお金がかかるという大家を説得して、自分たちで大改修を実施。3ヶ月の期間と改修費50万円がかかった。そして、美しく再生された町家に心から満足して暮らしを楽しんでいる。

「町家若人の宴」を開催 
 CHOBO自体は、建築家集団で特殊かもしれない。
しかし、CHOBOは、関心の高い若者を集めて「町家若人の宴」を連続開催し、まちぐらしの魅力の共有と暮らしのノウハウの伝達を進めている。d0087325_1028239.jpg
 第1回は、「集まれ若人! 町家若人の宴」で町家に関心のある15人程で立ち上げた。第2回は、「町屋に住みたい 若人集まれ!」で、町家ぐらしのススメの講演を聞き、町家で鍋パーティを行った。第3回が「町家の冬の過ごし方・火鉢講座」で、寒い冬に暖をとる火鉢の使い方、火起こし体験、火鉢の楽しみとしてのお餅焼きや串焼きを楽しんだ。第4回では、「市中の山居で火と暮らす・七輪講座」と題して、町家の庭で七輪バーベキューを楽しんだ。市中山居とは茶室、茶庭の理想を示す用語だが、その転用も含めて全体が実に新鮮だ。

リフォーム、シェア、自動車と若者
 吉田さん達には質問が相次いだ。
 「古い町屋をリフォームしてくれる業者がいないのでは?」という質問には、「地元で長年続いてきた工務店なら大丈夫。不動産屋に相談すると建替を勧められるようだ」と答えられた。
 「町家を二人でシェアするのは、プライバシーなどの問題がないか」という質問には、「ルールを決めて、ルールを守るように最初に決めておけばふすま1枚でも大丈夫。お互いの気配を感じる方が楽しい。」という答だった。
 「町家でも自動車が持てないと若者は離れるのではないか」という質問には、「街中では自動車は持たない若者が多い。維持費の負担が大きいので嫌われる。」と回答された。

地元まちづくり委員会の役割
d0087325_1031988.jpg 「若者は町家や地域の人間関係にあこがれるが、地域の方が若者をうるさいとか行儀がわるいとか、近所迷惑だとかで受け入れないのではないか。」という意見があった。
 これには、吉田さん達を足軽辻番所サロンに招いた笠原さんが、彦根市に隣接する豊郷町で、滋賀県立大学の学生グループが空き蔵を借りて改造し自分たちで住む「とよさと快蔵プロジェクト」の事例を紹介した。
そこでは、地元住民が主体的に「豊郷まちづくり委員会」をつくり、若者に空家を貸したり住民とのトラブルを仲介して問題を解決する受け皿となり、お祭りや空き農地の活用、子どもとお年寄りのふれあいなどでそこに住む若者達と一緒にまちづくりを進めている。

大学の力
d0087325_10315442.jpg さらに参加者からは、滋賀大学経済学部や滋賀県立大学、聖泉大学、ミシガン州立大学連合日本センターなど4千人を超える学生がいる彦根でも、町家や古民家を再生すれば学生の需要が期待できること、イギリスの大学などで古民家を大学が借りたり買ったりして大学院生に6人程度のシェアハウスとして貸し、伝統的建築物の保護と財産価値の保全を両立させている事例などが紹介された。

 「若者集団」と「地元まちづくり委員会」と「大学」。この3つのつながりが、彦根地域、なかでも芹橋地区のまちづくりのキーワードになりそうだ。(By E.H.)
[PR]
by hikonekeikan | 2010-12-24 01:17 | 辻番所・足軽屋敷