NPO法人 彦根景観フォーラム

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彦根まちなか見聞録7  知恵と力と勇気が集まる商店街

それぞれの彦根物語55
 10月25日午前、花しょうぶ通り寺子屋力石で、「花しょうぶ十二将!汗と涙の奮戦記」と題した中溝雅士さん(花しょうぶ通り商店街振興組合顧問)の話を聞いた。 


人と出逢うために生まれてきた 

 4年前、花しょうぶ通りのある店主が検査入院した。ガンが疑われた。朝夕、病院の窓から街を行き交う自動車の列をただ見るほかなかった。迫りつつあるのかもしれない死を前にして、自分は何のために生まれてきたのかと否応なしに考え続けた。そして、ついに結論に達した。
「人と出逢うために」この世に生まれてきたのだと。
 その話を聞いた中溝さんは、スーッと気持ちが楽になった。そうなんだ、「人と出逢う」ために生まれてきたんだ。

d0087325_0495874.jpg こんな根源的な深い話と、戦国ブームを当て込んで「石田三成「胆の毒」飴(たんのどくあめ)」をつくり売りだすというブラックユーモアな面が両立しているのが中溝さんだ。
 彼は、「清瀧旅館」のオーナーシェフ。大阪で板前修業をし、30歳で彦根に戻り旅館を継いだ。まだ40歳代前半だが、花しょうぶ通り商店街振興組合前理事長で、数々の修羅場をくぐってきたかのようないぶし銀の迫力、押し出しの強さがある。服装も相当に独特で、「板さん」というより「寅さん」を、私は連想してしまうのだ。
 現在は組合顧問となっているが、自らを「ラッキー顧問」という。この「ラッキー」(ツイている)にも深い人生論的な意味があるのだが、割愛する。


元気な商店街の秘密
 花しょうぶ通り商店街は、彦根市で最も弱小な商店街ながら、「ナイトバザール」や“ものづくり市場「アートフェスタ勝負市」“まちのプラットフォーム「LLPひこね街の駅」設立、「寺子屋力石」「戦国丸」の開店、戦国商店街宣言など、独自な発想で自主的・自発的な振興に汗を流す元気な商店街だ。
その元気の秘密はどこにあるのか、爆笑を連発する中溝さんの話から探ってみた。

 第1に、構成員の世代交代が一挙に進み、すべてが若い世代になって、いわゆる長老が若手のチャレンジにストップをかけるということがなかった点がある。ホームページを作るにも、「それで商店街に客が来るのか!」と長老に反対されて実現できないという愚痴をよく聞いたが、そんなこととは無縁だった。

 第2の要素は「出逢い」だ。滋賀県立大学の柴田教授、滋賀大学の山崎教授など現場の活動を大切にする先生や学生達との出逢いが、活動に広がりと幅を与えた。「しまさこにゃん」というマスコットキャラクターも10年前にある店主が好きで作った「嶋左近の会」の一昨年の例会で、嶋左近のファンだという若い女性が、即興で資料の片隅に描いた絵から生まれた。

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百の愚痴より十の提案、十の提案より一の実行

 第3の要素は、「断わらない。やってみよう」という姿勢だ。花しょうぶ商店街のスローガンは、「百の愚痴より十の提案、十の提案より一の実行」である。
 提案と実行を積み重ねてきた結果、当初「フォトコンテスト」だけだった「しょうぶ市」は、クラフト作家が出展するアートフェスタになり、音楽フェスタになり、400年祭では、商店街の人たち、大学生、保育園児、段ボール紙甲冑づくり教室、しまさこにゃん、いしだみつにゃんのキャラクターが共演する「戦国甲冑劇」が加わった。出逢った人にはインターネットでメールを配信し、多くのマスコミ関係者が注目してくれるようになっている。

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 「花しょうぶに相談したら、なんとか実現できる」という評判から持ち込まれる企画もある。彦根レッド計画「ひこね赤祭」もその一つで、赤い自動車150台を集めて彦根城駐車場を埋め尽くした。中溝さんは、およそ不可能と思われたイベントが成功した達成感から赤いボルボを衝動買いしてしまったという。

 400年祭で実現した「佐和山一夜城復活プロジェクト」に続く佐和山再会劇も11月23日に「義の旗の下に「第二章 友よ!」と題して佐和山で実行される。
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出逢いとやり抜く力がチャンスを拡げる 
 醒めた見方をすれば、これらは商店街イベントの枠を超えている。商店街の利益にもならないことに汗と涙を流す「ばかもの」と「わかもの」と「そともの」のイベントである。しかし、そのことがより大きな機会・チャンスを呼び込んでいるとは言えないだろうか。

 コーディネータの山崎教授は、人との出逢いがチャンスとなるためには、心の中にきちんと準備ができていて、心に響くことが大切だという。また、しゃにむに取り組んでやり抜くことが新たな出逢いを呼び込み、企画を呼び寄せ、チャンスをふくらませていくと強調された。花しょうぶ通りの経過を見ているとその通りだと思う。
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熱いネットワークと巻き込みイベント
 他の商店街との違いとしては、カリスマ的リーダーがいないことだ。中溝さんは、自分のことを「ネジのとれた人間」という。「とにかくやる」という馬力はあるが、調整やブレーキをかけることは苦手なようだ。しかし、「しっかりした人間」「学習塾を夜遅くまで手弁当でやる純な人間」「税金に詳しい人間」などいろいろなタイプの店主「十二将」が、さっと協力してくれる熱いネットワークがある。

 さらに、他の商店街はお客様を集めることに力点をおいて「おもてなし型」イベントになっているが、花しょうぶの場合は、お客様も仲間として一緒にやろうという「巻き込み型」で、一度巻き込まれると、手作りの「汗と涙の人間ドラマ」に感動してしまう。ファンになってしまうのだ。前者を「集客」、後者を「創客」というのだと気づかされた。


ゆるキャラまつり 
 この日は、「ゆるキャラまつりin彦根 キぐルミサミット・2008」の初日で、朝から2万5千人を超える人が「ゆるキャラ」の競演に集まった。花しょうぶ通りにも「いしだみつにゃん」「しまさこにゃん」目当ての人たちがたくさん訪れていた。明日は、この商店街で、ゆるキャラと一緒に大綱引き大会が開かれる。いかにも花しょうぶらしい。
 中溝さんが話している途中にも携帯が鳴り、清瀧旅館に泊まる予定の人が渋滞で彦根インターチェンジから一般道へ入れなくて困っているという連絡が入った。
 こんなことは、400年祭の前には考えられなかった。本当に彦根は変わった。(E・H)
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by hikonekeikan | 2008-10-27 23:33 | 談話室「それぞれの彦根物語」

《談話室》 それぞれの彦根物語 2008.10.4

【彦根物語53】
「生まれ変わった商店街 
        四番町スクエア・新しい街への取り組み」  

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中村 繁司
(四番町スクエア協同組合 理事長)




 大正11年第一公設市場として誕生。市場街と親しまれ終戦後の食料難の時代に80店舗に増加。生鮮食品店を中心の小売商店がアーケードの中に軒を連ね、ようはやり活気にみなぎっていました。スーパーの進出で衰退しシャッター街になり30軒に減少。


銀座街とつながるさみしいアーケード風景
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生き残りをかけ、市街地再開発を試みるなど研究を繰り返した末、エリアを2つに分け、先に第1エリアを区画整理し、ゾーン型の商店街に。景観のコンセプトを大正ロマンとし旧の地名を復活して四番町スクエアに名称変更。権利者の従後の土地利用に合わせた換地を行ない平成19年4月にまち開き開催。
新しく開店した店が増え、若い経営者の新しい発想での商店街運営で順調な発展が期待できるのは嬉しいことです。たまたま、築城400年記念祭と開国150年祭が催され、ひこにゃん人気のお陰もあって集客施設の四番町ダイニングをはじめ、2つの駐車場も予想を上回る成績です。

四番町スクエアでも大人気のひこにゃんです。
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夢京橋では早足で歩くのに比べ、ここでは、のんびりと散策してくれます。パティオや広場にアマチュアバンドが演奏に来てくれるなど人気スポットとなりました。
しかし、商店街の残り半分は未整備のままで来街客がここでUターンします。銀座街や花しょうぶ商店街へ街なかを回遊させるには、このエリアの再構築を急がねばなりません。
彦根城の世界遺産登録が論じられています。城だけでなく城下町らしい町並み整備が不可欠です。芹橋の足軽屋敷の保存と連携して、ここに高宮口門の関所があったことを生かしたまちづくりを目指し、今は駐車場になっている映画館跡地で毎年夏の終わりに星空映画祭を催して地域の想いをつないでいます。

高宮口御門跡
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【キーワード】
シャッター街、大正ロマン、ひこにゃん、世界遺産
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・シャッター街になってしまったヨ
・思い切りまちを作り変えようカ
・大正ロマンの街づくりダ
・ひこにゃんは大人気ヤ
・夢京橋径由花しょうぶ行きの商店街回遊ルートヲ
・彦根の町を世界遺産に登録しようゼ
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by hikonekeikan | 2008-10-15 17:51 | 談話室「それぞれの彦根物語」

彦根見聞録 夢京橋キャッスルロード 過去とともにある未来へ

毎回大変な彦根城下町検定試験について
   嶋津慶子さん 彦根商店街連盟広報部長 夢京橋商店街振興組合理事


d0087325_23324164.jpgそれぞれの彦根物語54 2008.10.11
 お話をいただいた嶋津さんは、夢京橋キャッスルロードのブライダルハウス サムシング・フォーの店主。結婚式の貸衣装や演出を手がけている。ウインドウに美しいウエディングドレスが輝くお店に、思わず足を止めてしまう。嶋津さんは、黒の服に小柄な体で、ファッション関係にしてはおしとやかな印象をうける。
 しかし、彼女が商店街連盟広報部長に就任してからの変化は、相当に激しい。

内向きから外向き広報へ
 彼女は、「郊外の大型小売店に対抗して商店街にお客様に来てもらうにはどうしたらいいか」を考え、まず商店街広報を改革した。それまでは、会員である商店主を対象とした内向き広報であったものを、外向きに変えた。
 お客様に訴求できる広報誌とし、45,000部を発行。名前も「あっ!!」と変えた。「あっ!ええもん見つけた!」の略で、「ちっちゃな感動」をお客様に提供できる「あきんど」でありたいとの「思い」がこもったネーミングだ。4年前にはじめ、現在までに16号を発行している。

商店街検定から城下町検定へ 
 商店街の店主は、他の店主の言うことを認めずお互いに足を引っ張り合う傾向があった。そこで、考えたのが商店街検定だ。漫才師やコメディアンを呼んで、商店街を歩き、試験をすることでお客様を商店街に呼び、商店街の意思疎通を改善しようとした。
 いろいろなクレームがついたが、市民やマスコミは、全国の地域検定ブームにいち早く対応して彦根検定が始まったことを歓迎してくれた。

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 そこで、2年目は「城下町検定」に切り替え、彦根史談会、彦根城博物館の協力のもとに実施したが、受験者はたった80人程度だった。姫路検定や明石のたこ検定が2000人台なのに、どうして受験者が少ないのか。どうしたら増えるのか。
 島津さんたちは、「テキストはないのか」という問い合わせをヒントに、彦根城博物館監修で「彦根城下町検定公式テキスト」(1,050円)をつくった。真っ赤な表紙にひこにゃんがデザインされた「赤本」だ。すると、彦根商工会議所の大ホールに入りきれず、2つの会議室を追加するほど受験者が集まった。

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 これに気をよくした嶋津さん達は、今年の会場を滋賀大学経済学部の大合併講義室にした。
 人数を増やす工夫として、検定対策セミナーを彦根城博物館能舞台で10月18日と11月15日の2回無料で開催する。本番は12月7日午後1時30分から、60分で100問を解き、80%以上正解で合格となる。申し込みはインターネットでも可能。締め切りは11月25日までとなっている。(hikone-kiina.jp/kenteiを参照)

秘密の合格術
 客観的にみると、商店街が主催していること、無料であること、合格者にはバッジがもらえるなど、全国の検定にはない特徴がある。ひこにゃんも応援に駆けつける。
 参加者で、実際に過去問題を26問、挑戦してみた。
 3択だから決して難しくない。彦根が好きな人なら楽しんで取り組める。セミナーとテキストを参考に実際に彦根の町を歩いてみることをお勧めする。とにかく、合格しなかったからといって彦根に出入り禁止となるわけでもない。無料なんだし、楽しみましょう。
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 それでも合格したい人はヤマを張ろう。受験対策セミナーを能舞台でやるのだから、能は出るだろう。井伊直弼関連の質問も必ず出る。嶋津さんのお宅では、ひな祭りは4月3日にしていた。3月3日は桜田門外で藩主井伊直弼が暗殺された日なんだから。こういう特殊な情報はきっと出題されるとみた。

集客の極意
 「本当に彦根の人は燃えません。どうしたらいいのでしょう?」という嶋津さんに応えて、どうしたら受験者を集めることができるか、皆で考えた。
 口火を切ったのはN氏。「ふっ」と謎の笑みを浮かべて、「簡単ですよ。事件をおこすことです。」と言った。「ひこにゃんだって著作権事件でもめて有名になった。私なら手下に命じて試験問題の捏造疑惑を起こし、新聞沙汰にする。そうしたら話題になって、受験者が押し寄せる。」 
 これには大爆笑。捏造して何の得になるのかよくわからないが、嶋津さんは「私の美しいイメージに合わない!」と笑って却下。市民や一般の人から試験問題を募集する、城下町検定の名前がかたいので「ひこにゃん検定」にする、などのアイデアが出された。
 しかし、お客様の行動を認知、行動、リピートと分析する行動科学的手法から見ると、N氏の発想は、反社会的な面を除けば、認知の極意だと思うのだが・・。

夢京橋キャッスルロードの夢と現実
 d0087325_0181511.jpg嶋津さんは、観光客でにぎわうキャッスルロードのまちづくりをどう思っているのだろうか。
 嶋津さんが小学生だった昭和30年代の中ごろから既に本町通の道路拡幅の話はあった。昭和40年12月に本町線の拡張が都市計画で決定された。
 そして、衰退が著しく進むなか、昭和61年に本格着手。町づくり委員会が設けられ、建物は統一した江戸町屋の外観とするため細かいデザインコードが決められ、まちなみ審査会で厳密な審査がなされた。昭和63年11月一号街区が着工、平成11年5月に全体が完成した。

 本町通りで道路拡張に賛同した68戸のうち商店は38戸にすぎなかった。そして、いまも商店として続いているのは11戸だけである。あとは、商売をやめたりテナント貸しになったりした。
 都市計画道路の拡張に伴う街区整備は、換地を伴う土地区画整理となるため、一帯の全部の建物を取り壊し新築するか移転しなければならない。一軒でも残したら成立しない仕組みなのだ。
 夢京橋は「張子のとら」「造りもののテーマパーク」と批判されることもあるが、そうしないと家が建てられなかったのが現実だ。

過去とともにある未来
 島津さんのかつての町家は、隙間が多くてエアコンをつけても無駄だといわれた。それが新しくなってエアコンも良く効くようになり快適な生活が実現した。反面、「ほっこりとした気分になれる」空間は失われた。「新しい家になってありがたいが、さびしい」と嶋津さんはいう。
 小さな頃、芹橋に習い事に通っていた彼女は、足軽屋敷の玄関や座敷の空間をよく覚えているという。それらが消えてしまうのは、本当にさびしい。
 古いものを壊して新しく造るこれまでの街づくりとは少し違う未来があるのではないか。過去を消すのではなく、過去とともにある未来があるのではないか。島津さんはそう語っているように思えてならなかった。
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次回の「それぞれの彦根物語55」は10月25日(土)10:30分より
「花しょうぶ十二将!汗と涙の奮戦記」 
   中溝雅士さん(花しょうぶ通り商店街振興組合顧問 前理事長)
 
 数々のイベントを企画し超エンターテイナーの中溝さん。この人のトークをFM彦根で聞いたが、文句なしに面白い。寅さんの2倍面白い。この機会は絶対に逃せません。
 寺子屋力石もルアムのakiさんの手でますます美しく変身中。期待して来てください。(E.H)
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by hikonekeikan | 2008-10-13 01:16 | 談話室「それぞれの彦根物語」

第1回シンポジウム 多賀「里の駅」のめざすもの 一圓屋敷の保全と活用

 彦根景観フォーラムでは、地域の人々と一緒に、多賀町一円の古民家・一圓屋敷を保全し、「里の駅」として活用しようという計画づくりを始めました。
 平成20年9月28日(日)第一回「里の駅」シンポジウムを開催し、「そばの花鑑賞と新米での食事会」で里山の素晴しさを体験しつつ、「里の駅の目指すもの」について語り合いました。
その概要をお知らせします。
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● 一圓屋敷と「里の駅」のめざすもの
   彦根景観フォーラム理事長 山崎一眞・滋賀大教授

 一圓屋敷は、江戸時代から続く庄屋で、2007年3月に所有者より「社会的に活用してほしい」と寄付申込があり、6月の彦根景観フォーラム総会で受諾を決定した。2008年4月に多賀町・一円集落の役員さんとも協議し、9月に所有権が移転された。

 一圓屋敷は、敷地1,678平方m、建物面積が約560平方m、3つの蔵をもつ。建物は約250年前に建てられ、明治期に大改修されたことがわかっている。

 一圓屋敷を保全・活用するため、多賀の有志の人たちでつくる「多賀クラブ」と彦根景観フォーラムが共同して「多賀「里の駅」」を9月1日に立ち上げた。
 多賀「里の駅」のめざすものは、「里山一円集落で培われた歴史・文化を維持・継承し発展させる」ことを基本とし、当面3年間は、住民や多賀町と一緒に保全と活用の実験をしつつ、一圓屋敷を活用したむらおこしや都市住民との交流を模索していきたい。
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● 多賀「里の駅」・一圓屋敷を楽しく活用しよう
   彦根景観フォーラム会員 堀部栄次・母利美和


 一圓屋敷の価値を知ることが大切
 建築的な価値としては、茅葺きを改修し、さらに幾度か増築・改修した跡を残す貴重な建物で、建築年代や改修年代の調査を進める必要がある。
 歴史的な価値としては、井伊直弼が領内巡視時に泊まった事実があり、当時の式台玄関や茶室が残されている。また、襖や額、屏風に彦根藩の文人の書や絵、手紙も多く残され、明治以降も日下部鳴鶴の書などがあり、文化的にも貴重である。
 さらに、江戸期の庄屋として彦根藩と村との関係を記録した村方文書が滋賀大学史料館に寄託されている。明治以後も地域の有力者として政治や経済に関わったと見られる文書が見つかっており、犬上郡の社会経済の変遷と一圓家の歴史が今後解明される可能性がある。
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貴重な歴史遺産である一圓屋敷を、どう保全するか。
 彦根市内では、大正期の近代和風建築の傑作であった近江絹糸迎賓館の和光会館が取り壊わされ、江戸期の辻番所・足軽屋敷は、市民運動により取り壊しの危機を免れた。この違いは「地域住民と無関係な建物は滅びざるを得ない」ことを示しており、地域住民が文化財としての価値を守りつつ、楽しく活用することが大切である。

多賀クラブ・談話室
 当面、一圓屋敷の活用は、多賀クラブを中心に、毎月1回第一土曜日に談話室を開催し、合わせて里山の散策や自然体験、田舎料理を楽しむ会などを計画している。さらに、一圓屋敷を活用して、一円地域や多賀のむらおこし、まちづくりにつながることが望ましい。多賀は、人と自然の営みが美しい里山の魅力に加え、交通アクセスが便利で、都市と農山村の魅力が背中合わせにある珍しい地域であり、都市住民との交流が大いに期待できる。

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都市と農山村の交流
 滋賀県の平成19年度世論調査や、伊吹山麓の農山村などで実施した「田舎暮らし実感・交流プログラム」のアンケート結果では、県内の都市住民の約20%は都市と農村の交流を望んでいる。特に湖東地域は、市民農園や週末農業体験をしたいという希望が高い。
 また、伊吹山麓で実際に農村体験・交流をしてみた人たちの参加目的(動機)をみると、「地元の方の話を聞きたかった」(70.7%)が圧倒的に多く、関心のあるものは、「農家民宿・体験」(61.0%)と「二地域居住」(41.5%)となった。

 このことから、都市住民は単に田舎生活を体験したいのではなく、本当は、地元の人との交流を求めていることが解る。都市住民との交流を進めるには、地元に誇りをもち、地元の暮らしの意味を語れる生活人を発掘し育てることが、ポイントになる。

地元学のすすめ
 地元の人が、デジカメをもって地域を歩き、良いところを写したり、地元の人の物語を丁寧に掘り起こして記録し、情報カードに集める。その際、外部の人を積極的に入れることで、当たり前と思っていたことに新しい「気づき」が生まれる。それらを組み合わせ、新しいものをつくろう。これは、やってみると結構楽しい。

 米原市では、梅花藻とライトアップを組み合わせて夜の観光を創造した。高月町では、漬け物とパンを組み合わせたサラダパンが人気だ。彦根市では、ひこにゃん+佐和山の発想から「しまさこにゃん」が生まれている。
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「里の駅」を楽しく活用しよう
 このように、地元の人が地元を発見し、地元を楽しむ「里の駅」に、都市住民が参加し、多賀町全体に、農業体験や農家レストラン、農産品の直売、農家民宿などが徐々に広がるのが理想的だ。
 「多賀クラブ」が開催する一圓談話室(月1回)では、地域の人材にスポットをあててお話を聞き、地域を歩く。談話室の参加者は、地域住民はもとより、工場の技術者、町民・市民、学生、行政職員など広い範囲に呼びかけ、新鮮な見方を取り入れたい。

 これはおもしろい、是非やってみようというアイデアがでてきたら、「この指とまれ」で有志を募り、むらおこし実験室のつもりで楽しく実行していきたい。


● 参加者との意見交換

 参加者からは、多賀町がそばの生産量では近畿一なのに地元での活用ができていないので、是非活用を考えていきたいという意見があった。
 また、一圓屋敷の維持管理のために都市住民との交流を考えるのは理解できる。しかし、一足飛びに都市との交流を目的に展開すると、地域住民は都市住民が集落内に入り込むことを迷惑だと感じるので慎重に取り組む必要があるとの意見が出された。
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お知らせ 
多賀「里の駅」一圓屋敷・談話室は、次回11月1日(土)10時30分から一圓屋敷で開催します。また、同日9時から「野鳥の森」植物観察会も同時開催します。皆さんの参加をおまちしています。
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by hikonekeikan | 2008-10-09 21:33

第2回 辻番所・足軽屋敷活用ワークショップ

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平成20年8月2日(土)、辻番所・足軽屋敷の活用を考える第2回ワークショップが、彦根市芹橋二丁目に残る辻番所をもつ足軽屋敷で開かれ、約40人が参加されました。
その概要をお知らせします。






d0087325_20293784.jpg ■ 急がれる辻番所・足軽屋敷の修理・保全
    滋賀県立大学 濱崎一志教授(建築)

 足軽屋敷はシロアリの被害がひどく、地震などで倒壊する危険があり、柱の応急補強を行う。
 辻番所も、基礎が腐るなど老朽化が著しく、支柱で支える対策が必要。辻番所は、元の姿を確定してから本格的な修理を行う。
 彦根の城下町遺産として、足軽屋敷、辻番所は極めて重要であり、市が買い取ったあとは、文化財として早急に保存・修理が行えるよう努力したい。



■ 辻番所・足軽屋敷の取得運動と今後の運営
      彦根景観フォーラム理事長 山崎一眞・滋賀大教授

 市民の努力で集まったトラストの寄付金600万円を彦根市に寄付し、市が文化財保護基金を活用して8月中に買い取る。市は、運営は市民とNPOにお願いしたいという意向。
 建物は、元の姿を取り戻すことが優先する。
 その上で、どう運営するのか、地域の皆さんと考えたい。
 さらに足軽組屋敷の保存と芹橋の未来をどう描くのか、「歴史遺産を活かしたまちづくり」を、住民主体で実践してゆきたい。
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辻番所・足軽屋敷の再生キャンペーンの経過(8/31現在)
2007年    8月初旬  足軽辻番所の所有者より売却の意向が伝わる
         9月12日  彦根景観フォーラム理事会で対応策の検討を決定
         10月10日  彦根景観フォーラム理事会で募金活動の実施を決定
         10月31日  彦根古民家再生トラスト呼びかけ人会合
         11月 7日  彦根古民家再生トラスト設立の記者発表
         11月11日  募金キャンペーン開始(街歩きイベント)
         12月 1日  彦根古民家再生トラスト設立総会
                   ~   (募金活動 累計 250万円)
         12月末    彦根市文化財保護基金条例の議会承認
2008年   1月18日  第1回トラスト理事会(市買取案を協議)

         3月15日  第1回辻番所シンポジウム
         3月16日  市長へ市買取の打診(戦国商店街宣言時)
                   ~   (募金活動 累計 500万円)
         3月末     市買取を6月議会提出を決定
         4月 4日    第2回トラスト理事会(市買取・寄付を承認)
                   ~   (募金活動 累計 600万円)
         6月 1日    第2回辻番所シンポジウム(第一回ワークショップ)
         6月 2日    彦根市20年度補正予算で辻番所買取を発表
         6月 7日    辻番所実測調査
         7月11日   辻番所耐震応急対策(8/11~8/22)
         8月 2日    第二回ワークショップ
         8月中      市が辻番所・足軽屋敷を購入


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■ 保存と活用をめざすワークショップ
 芹橋自治会役員や関心の高い人たち約40人で2班に分かれ、活用案と担い手を議論した。

 第一班では、自治会館として、老人会の料理教室、趣味のグループへの貸出、コミュニティ食堂の開設という案と、足軽屋敷記念館として、芹橋の歴史や遺産を紹介し見所をガイドする拠点とする案が示された。  
 担い手は、芹橋二丁目自治会、足軽倶楽部、景観フォーラム等で連合会をつくり、足軽屋敷に「屋敷守」をおき、当面土・日を開放するなどの運営ルールが提案された。
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 第二班では、芹橋の地域的な背景として、高齢世帯、単身老人世帯、空家が多い、小学生が減って従来の地蔵盆ができなくなった、歴史好きな人が多いということから、①歴史講座や手作り甲冑教室などの開催、②地域の古民具、古文書、ひな人形の展示イベントなどの開催をおこなう「芹橋サロン」を開設する、芹橋二丁目の合同地蔵盆をするなどが提案された。
 担い手は、新・足軽倶楽部を、芹橋や市内から会員を募集して組織し、芹橋自治会、景観フォーラムも参加する、建物の管理や活動経費は、当面、助成金などを活用するが、将来的にはボランティアガイドを養成して、地域のガイドツアーを行うなど観光ルールを導入して経費を確保するなどの提案がされた。
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by hikonekeikan | 2008-10-09 20:48 | フォーラム

彦根まちなか見聞録5  景観10年、風景100年

生まれ変わった商店街 -四番町スクエア・新しい街への取り組み

寺子屋力石「それぞれの彦根物語53」(2008/10/04)
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 お話をいただいた四番町スクエア協同組合理事長 中村 繁司さんは、四番町の丸矢旅館のご主人。
 商店街組合の理事長が一般商店主ではなく旅館のご主人とは、少し妙な感じがする。だが、NさんやWさんなど商店街の熱心な役員には、旅館の主人が多い。
 その謎が解けた。旅館は朝・夕は死ぬほど忙しいが、昼間は閑。加えて人扱いがうまい。他の店主は昼間が忙しい。そこで目をつけられるのだ。


30年かかった四番町スクエア
 四番町スクエアは、旧の市場商店街と比べると「生まれ変わった」という表現がぴったりするほど、過去の痕跡を残さずに「新しい街」に変わった。
 最盛期の市場街は、その名のとおり八百屋、魚屋、肉屋、豆腐屋、食堂、和菓子屋などが狭い通りの両側に連なり、道にはみ出して商売をしていた。多くの客で通りはごった返し、魚や肉を焼くいい匂いが漂って、客と店主とのやり取りも楽しかった。

 しかし、昭和50年代になると客は減り、80店を数えた商店街組合も30店に減少した。昭和53年、再開発の協議が始まる。当初は、大型高層の再開発ビルを検討していたという。しかし、背の高い建物は彦根に合わないと断念。夢京橋の江戸風につながるまちとして「大正ロマン」のコンセプトで再開発に着手、平成19年に完成した。実に30年かかったのだ。


年中イベント戦略
 四番町スクエアの店舗は50店に増えたが、構成は大きく変わった。生鮮が減り、飲食が大幅に増えたのだ。岩盤浴、アロマセラピー、エステなどの新サービスも参入、物販ではキャラクターなどのグッズ店が9店となった。これに伴って、旧来の組合員は18に減り、新規組合員が32となった。区画整理事業を機に商売をやめ、テナント貸しになった人も多い。

 中村さんは、こうした新旧の店主たちに、議論や金を出させるだけでなく、イベントで一緒に汗をかく機会を意識的に作っている。そして、若い人たちのアイデアを巧みに取り入れ、「年中イベントの街」を創り出している。
 最大の集約力を誇るスターは、「ひこにゃん」だ。パティオには「ひこにゃん」石像があり、季節ごとにデコレーションされる。「ひこにゃん」イベントは、常に満員だ。
 このほか、彦根景観フォーラムも共催した星空映画祭、パソコン絵画展、草木染展、よさこいソーラン、高宮町で開催されたテント絵画展を誘致、あんどんフェスタ、ストリートミュージックフェスタ、ワンコインでビールが飲めるビールフェスタなど、d0087325_012644.jpg 「年中イベント戦略」がこの街の集客力の大きな秘密であり、店舗構成にもフィットしている。

なお、10月25・26日に開催の「ゆるキャラまつりin彦根」では、当初四番町スクエアで着ぐるみのキャラクターが集まる「キグるミサミット」が予定されていたが、あまりの前評判のよさに来場者を収容しきれなくなり事故がおきる危険性が高いとして、夢京橋の道路を歩行者天国にして開催することになった。


四番町スクエアの強みと心配
 イベント、お洒落、おいしい飲食、エステ、キャラクターグッズなどで、楽しく心地いい時間消費を求めるお客さまの心をとらえた四番町スクエア。観光客だけでなく地元のお客さまもリピートしているのが強みだが、心配事がないわけではない。
 ブームは急に去る。次に何を魅力として打ち出し、息の長いまちづくりに結びつけるのか。長浜の黒壁は3セク単一経営で町なみをまもり、風俗店などの進出を防いでいるが、商業協同組合は、多様性が活力を生む反面、まち全体を考えて結束して行動できるのか。


景観十年、風景百年、風土千年
 実は、四番町の区画整理事業は、旧商店街の半分しか終わっていない。残りをどうするのか? 中村さんは、銀座街へのつながりや世界遺産をめざすまちづくりを視野にいれて、色々と考えている。高宮御門の復元も一つの選択肢に入っている。
 ただ、これからの大規模な再開発事業は、市や土地所有者の負担も大きく、さらにむずかしくなるだろう。より順応的な手法は考えられないのだろうか。

 中村さんは、「景観十年、風景百年、風土は千年」と言った。まちづくりには十年かかる、まちが人や自然になじむには百年かかるという意味だ。こんな「覚悟」をもって活動する店主がいるとは、彦根という街は、なんと素晴らしいのだろう。
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次回の「それぞれの彦根物語」は、10月11日(土)10:30~12:00
「毎回大変な彦根城下町検定試験について」
嶋津 慶子さん(彦根商店街連盟広報部長、夢京橋商店街振興組合理事)

どなたでも参加できます。一緒にお話を楽しみましょう。
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by hikonekeikan | 2008-10-06 23:49 | 談話室「それぞれの彦根物語」