NPO法人 彦根景観フォーラム

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歴史的景観を活かしたまちづくりセミナーの報告 

歴史的景観を活かしたまちづくりセミナーの成果 
         芹橋二丁目のまちづくりを提案する

第11回「まちの活性化・都市デザイン競技」受賞作品発表会
d0087325_23512359.jpg 江戸期から続く歴史的景観を生かしたまちづくりのあり方を考える「歴史的景観を活かしたまちづくりセミナー・第11回まちの活性化・都市デザイン競技受賞作品発表会」(彦根市主催)が1月24日(日)、彦根市の四番町スクエア・四番町ダイニング多目的ホールで開催され、彦根藩足軽屋敷が残る芹橋二丁目地区を対象に3団体が提言を発表しました。

 
 セミナーでは、西村幸夫 東京大学教授(第11回「まちの活性化・都市デザイン競技」審査委員長)が「路地からのまちづくり」と題して、近年脚光を浴びてきた路地の重要性について基調講演を行い、その後、芹橋二丁目を対象にした昨年の「まちの活性化・都市デザイン競技」(都市づくりパブリックデザインセンター主催)で、入賞した作品が発表され、最後に西村教授による講評が行われました。


時代の変化と「路地」からのまちづくり
d0087325_23523912.jpg 基調講演では、西村教授が、倉敷、鞆の浦、葉山、法善寺横町、東京下町、イタリアなどで路地の保全・再整備が行われ、巨大商業ビルにも路地を模したモールが整備された事例を紹介され、クルマが入らず不便で防災面でも問題があると否定されてきた「路地」が、今後は、歩いてゆっくり暮らす豊かな文化のまちづくり、安全でヒューマンスケールのまちづくりの原点になると指摘されました。
 また、この先百年は、クルマにすべてを合わせる社会から、路地の豊かな文化を生かせる、人間に合わせた移動手段が主流になるのではないかと述べられました。
 さらに、建築基準法では最低4mの道路幅がないと建物の建築を認めてこなかった経過があり、その結果、建物が老朽化して防災性能が落ちている点について、2,7mの路地を認めた42条3項の規定を積極的に活用し、建物の防災性能を上げるなどの工夫をすべきだと述べられました。


テーマは「歴史的まちなみと現代生活の両立」
 その後、3団体によるまちづくり競技提案の発表に移りました。
 今回の競技テーマは、現代の生活に対応した住環境の形成と歴史的なまちなみの保全の両立であり、具体的には、足軽組屋敷の町割りの特徴である1間半(2.7m)の路地が重要な原風景の一つと評価される反面、自動車が進入しにくく、生活に不便であり、介護や防災などの活動が制限されること、その結果として人口が減少し、住民の高齢化が進んでいる、建物が老朽化し、空地、空家が増えているという現状をどう改善し、まちを活性化していくかという課題です。

d0087325_23533222.jpg 最優秀となった国土交通大臣賞の「明日軽まち」(中垣純一ほか4名 玉野総合コンサルタント(株))では、交通・防災面の改善が最も重要との視点から、保存する区域と再整備する区域に分け、6m幅の生活道路を曲げながら地区を横断、一部を南北に延ばす形で影響を最小限に留めるルートで整備し、空地も含む柔らかい土地区画整備で推進するという提案でした。


d0087325_23541152.jpg まちづくり月間実行委員会会長賞の「城守人の町」(川崎泰之ほか6名 大成建設(株)設計本部)は、まちづくりは「人」が最も重要との観点から、交通・防災面は現在の路地を部分改良するにとどめ、散策コースや観光施設の整備により観光地として訪れる人を増やし、そこから定住人口を増やしていこうという提案でした。



d0087325_012418.jpg 彦根市長特別賞の「芹橋足軽組地保存計画」(土屋敦夫ほか2名 滋賀県立大学人間文化学部)は、歴史的に土地所有者の変化が少なく区画割りの変更も少ない点を重視し、区画の大きさや商店街と近接している立地から住宅地としての再生が最も有利であり、路地の改変は電柱の撤去程度にとどめ、柱や門による修景、新築建物の外観規制を導入しようという提案でした。


異なる3つのまちづくり
 西村教授は、講評で、次のように述べられました。
 今回は課題が明確なのに、視点によって導かれる解決が全く違う結果になった。これは、芹橋という地域が持っている個性や奥の深さと、それを見る提案者の歴史認識の違いがそうさせたと言える。どの案も、夢物語ではなく現実のまちづくりとして真剣に向き合っているプロらしい提案だった。
d0087325_23555128.jpg  それぞれに優れており、どれがよいという講評はできないが、3つの提案に共通する部分がある。2.7mの路地を42条3項道路として認め、条件をつけて建物を改築していく。景観ルールを決める。空地を積極的に利用していく。これらを取り入れて、プロの力を利用しながら歴史遺産を活用したまちづくりを推進して欲しい。


「ひこにゃん」登場 
 このあと、各受賞グループに、「ひこにゃん」から記念品が手渡されるというニクイ演出があり、受賞者は大喜びでした。



西村教授を囲むまちづくり茶話会

 セミナーの終了後、足軽屋敷中居邸に移動し、芹橋の住民、彦根景観フォーラム会員などで約一時間程度、「西村教授を囲むまちづくり茶話会」を行いました。d0087325_0172759.jpg

 住民の方から、住民同士で合意が成り立ちにくい中で何からまちづくりを始めたらよいのかなどの問いかけがあり、西村先生や参加された滋賀県立大学、滋賀大学の先生方から金沢市、今井町、京都市などのまちづくり実践現場の知恵などを含めて的確な助言をいただきました。
  

その結果、概ね次のようなことが整理できました。

①路地再整備と景観協定をセットに
 狭い路地で最も問題となっている電柱については、高コストの地中化ではなく、屋敷の裏側の背割り水路側へ移設して通りやすくし、2,7mを確保する、同時に地域外の方が芹橋の土地を買い周囲の景観とは調和しないアパートや個人住宅を建てられる現状に対して市役所と協働して景観計画にもとづく景観協定を土地所有者などで結び景観保全を行っていく、これをセットにして一つの通りだけでも実現し、良くなることが目に見えるように進めていく。

②芹橋まちづくり宣言
 路地の向こうは自治会が違うという行政区画になっており情報共有が困難になっている、土地だけを持っていて住んでいない人が多いなどの課題があるが、手を尽くして克服していく。そのためにも、住民にひろく呼びかけ「芹橋まちづくり宣言」を行う。

③何のためのまちづくり
 まちづくりのめざすものは、路地を活かした住民の暮らしの改善であり、住民が誇れるまちの歴史の継承である。これを基本に防災や交通対策を考える。住民のためにまちづくりをするのであり、個人で来られる観光客は歓迎するが、大量の観光客やサービス施設を呼び込むことにならないように慎重に対応する。

④古民家再生のしくみ研究
 所有者が他の土地で暮らしていて土地と空家だけが残り、建物が老朽化して壊さざるを得ない案件が多い。それでは手遅れであり、早めに実態を把握し壊さずに新築より安く改修して販売または賃貸する手慣れた建築家と買いたい人・借りたい人に紹介する組織を、市・県、建築士協会などと協力して研究する。先行事例として、倉敷の古民家再生トラスト、京都市の京町屋作事組、京町屋再生研究会などがある。
                                      (文責:堀部 栄次)
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by hikonekeikan | 2010-01-29 00:32 | 辻番所・足軽屋敷

彦根まちづくりセミナーと西村幸夫先生を囲む茶話会 (1/24)のお知らせ

芹橋のまちづくりを語ろう
彦根まちづくりセミナーと西村幸夫先生を囲む茶話会 (1/24)のお知らせ

 1月24日(日)彦根市主催のまちづくりセミナーが開催されます。セミナー終了後、彦根景観フォーラム主催で講師の西村幸夫先生を囲む茶話会を芹橋の足軽屋敷中居邸で開催します。
市民の皆さん、まちづくりに関心のある皆さんに多数ご参加いただきますよう、お知らせします。

●歴史的景観を活かしたまちづくりセミナー 
     (第11回まちの活性化・都市デザイン競技」受賞作品発表会

日時: 平成22年1月24日(日)午後1時~4時
場所: 四番町スクエア内「四番町ダイニング」3階多目的ホール
主催: 彦根市
内容:
 基調講演 「路地からのまちづくり」
   西村幸夫氏 (東京大学教授、第11回「まちの活性化・都市デザイン競技」審査委員長)

 受賞作品発表
  1、国土交通大臣賞 「明日軽まち」 玉野総合コンサルタント㈱
  2、まちづくり月間実行委員会会長賞 「城守人の町」 大成建設㈱設計本部
  3、彦根市長特別賞 「芹橋足軽組地保存地区計画」 滋賀県立大学人間文化学部生活デザイン学科)
 講評 西村幸夫
 
 
 このセミナーは、昨年3月に彦根市芹橋二丁目地区を対象に「まちづくり」提案競技会が開催され、全国から98のグループが48のまちづくり提案を提出し、国土交通大臣賞などが選定、表彰されました。その優秀作が今回発表されるものです。詳しくは、こちらをご覧ください。
  彦根市HP: http://www.city.hikone.shiga.jp/topics/top20091224_132752.html
セミナー終了後、講師で審査委員長の西村幸夫先生を囲む茶話会を以下の通り開催します。

●西村幸夫先生を囲むまちづくり茶話会

日時  平成22年1月24日(日)16時30分~18時 
場所  芹橋二丁目 足軽屋敷 中居邸 定員約20名
主催  彦根景観フォーラム 
     ご希望の方には、セミナー会場で地図をお渡しします。


●競技テーマは「現代生活に対応した住環境と歴史的まちなみの両立」
 彦根市は、江戸時代初期に完成した近世城下町都市の典型といわれるほど歴史的価値の高い都市遺産を残していますが、それらも老朽化や地区開発により多くが失われつつあります。彦根市にとって、現代の生活や経済活性化に対応する都市づくりと歴史的な資源の保全・再生は両立のむずかしい課題です。
 市民も、歴史遺産の価値を心情的に理解しつつも、生活の利便性や商業振興、防災の観点から現代住宅の建設や「キャッスルロード」、「四番町スクエア」などの土地区画整理、都市計画道路整備を進めてきました。

 こうした中で、江戸時代に「善利組」とよばれた足軽組の屋敷があった芹橋二丁目を対象地区に第11回「まちの活性化・都市デザイン競技」が昨年開催され、優れた提案が表彰されました。テーマは、現代生活に対応する住みやすい環境づくりと歴史的な資源を活かした美しいまちなみ形成の両立です。
 24日(日)に発表される3つの提案は、以下のホームページからご覧いただけます。
  http://www.udc.or.jp/activities/design/design11_kekka.html

 芹橋地区の特徴は、江戸末期の足軽屋敷が30棟近く残っており、1間半の路地も当時のままで日本でも希少な原風景の一つが残っている反面、自動車が進入しにくく、介護や防災などの活動が制限されること、不在地主が多く古い家屋の多くが賃貸されていて住民の一体感に乏しいこと、住民の高齢化が進んでいることなどです。

 3つの提案では、幅6mの生活道路を設けるか否か、地区全体を保存対象とするのか保存部分と開発部分に分けるのかで判断が分かれています。この判断は、10年後、20年後の芹橋をどんなまちにするのかを最終的に住民自身が考えて合意しなければならないことです。

 今回の競技提案は、いずれも、まちづくりの複雑に絡んだ問題を解きほぐして整理し、個性を活かして組み立て直した優れたものばかりで、彦根市民にとって自分のまちの将来像を具体的に検討できる土台が与えられたといえます。
 多くの市民の皆様、まちづくりに関心をもつ皆様にぜひ、ご参加いただきたいと思います。

●西村先生を囲む茶話会のご案内
 彦根景観フォーラムでは、発表会終了後に一時間程度お茶を飲みながら西村幸夫先生と車座で語りあう「まちづくり茶話会」の場を設けます。
 講師の西村幸夫先生には、快くご承諾いただきました。 セミナーで提案された芹橋のまちづくり提案を題材に、皆さんが日頃まちづくりでご苦労されていることや悩み、こうありたい夢などを語り合いましょう。
 
 西村幸夫先生は、日本各地のまちづくりの現場で請われて的確な助言・指導をされているまちづくりの第一人者です。
 昨年6月に彦根景観フォーラムが開催したシンポジウムで紹介した「石見銀山協働会議」のまちづくりや「鞆の浦」のまちづくりでも調査・助言されています。
 著書も多く、近著では「路地からのまちづくり」(2006年)「まちづくり学-アイデアから実現までのプロセス」(2007年)「観光まちづくり―まち自慢からはじまる地域マネジメント (2009年)などがあります。
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by hikonekeikan | 2010-01-17 23:14 | お知らせ&NEWS

《談話室》それぞれの彦根物語2009.12.19

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by hikonekeikan | 2010-01-13 10:00 | 談話室「それぞれの彦根物語」

ふるさとの味を伝える大切さ

 多賀里の駅・一圓屋敷では、毎月第一土曜日の午前10時30分から、多賀や周辺地域に住む人々が集まり、いろいろなお話を聞き話し合う会と郷土料理の試食会を開催しています。

d0087325_2331665.jpg 1月9日(土)は、あたり一面の雪景色。みんなで除雪したあと、「ふるさとの味を伝える大切さ」と題して「番場ふるさと味の会」による郷土食開発のお話がありました。
 豆腐と薄力粉でつくった「石垣ダンゴ」は、しっかりとした弾力がありがなら柔らかく後味がすっきりとした甘さで、初めての食感でした。
 そのあとの試食会は、多賀の漁師さんが撃ったイノシシを使っての「イノシシ汁」でした。
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 次回、2月6日(土)は、「もっとわかった!一圓屋敷の建物物語」と題して滋賀県立大学 濱崎一志教授による解説と、「多賀のぜんざい」の試食会です。 参加費500円
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by hikonekeikan | 2010-01-12 23:33 | 多賀里の駅・一圓邸

2010年年頭のごあいさつ

「複合の美」 
  追求の一年に

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 「野に咲く多くの異なる花は野の美を傷めるであろうか。互いに互いを助けて世界を単調から複合の美に彩るのである。」

 これは民藝運動家「柳宗悦」の言葉だ。
グローバルな力が強く働き、地区固有性が消滅しつつある今日、「複合の美」は重視されるべき思想だと思う。

 この多元的文化論をベースに、わがNPOの目指す「年輪を刻む都市」「地区の歴史を活かす都市」の議論を、より深め・より豊かにする一年にしようではありませんか。

謹賀新年 

  山崎一眞  彦根景観フォーラム理事長
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by hikonekeikan | 2010-01-12 22:50 | 景観フォーラムが目指すもの