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NPO法人 彦根景観フォーラム

室内オーケストラとドラッカーの「マネジメント」

『エコメモオーケストラの軌跡と今後』 
         エコーメモリアル・チェンバーオーケストラ代表 若林嘉代子さん
                       「それぞれの彦根物語75」 6月19日(土)10:30~
                       場所:ひこね街の駅「寺子屋力石」


室内オーケストラとドラッカーの「マネジメント」_d0087325_11472574.jpg私は、音楽を本当に聞いているか?
  彦根物語75は、モーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジーク、バッヘルベルのカノンの2つの弦楽四重奏で始まった。
 よく知られた曲だが、非常に正確なアンサンブルで、また演奏者と聞き手のあまりの近さに、音楽の美しさを耳でも目でも感じることができた。
 よく、音楽は純粋に聞こえる音を楽しめばよいと言われるが、私は自分が本当に聞いているのかどうか疑わしいと思っている。特にクラッシックは、構造が複雑で奥が深い。聞くたびに新しい発見がある。多様な解釈が成り立つし、その解釈を知ることでさらに新鮮な発見をする。

 こういう話を聞いたことがある。
 小学生に、何も見ないでアリの絵を描かせるとほとんどの子が頭と胴体に二本の後ろ向きの触覚と四本の足を描く。次に実物を見せてよく観察して描かせても、ほとんどが依然として後ろ向きの触覚のついた頭と胴体とそこから伸びる四本の足なのだ。
 そこで、「よーく見てごらん。アリの体は、頭と胴体だけかな」と導いて、はじめて3つに区切れていることに気づく。実物を見ているからといって、本当に実物が見えているとは限らない。彦根の町にいても彦根が見えていないのと同じかもしれない。
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エコメモオーケストラの軌跡

 若林さんによると、このオーケストラは、1997 年2 月の「ひこね市文化プラザ」の開館を記念し、彦根市出身あるいは彦根に縁のある若手演奏家を集めて結成された。音楽ホールである「エコーホール」の名を冠した「冠オケ」として彦根市のスポンサーシップのもと、プロの演奏家達が年1回、2~3 月に演奏会を開催してきた。
 2002年には、市の財政難などから室内アンサンブルとして再生し、毎年300 人以上の来場者を確保。演奏水準も高まり、観客からは高い評価を受けている。また、若い人材育成の役割も果たすなどの成果が出てきた。

 ところが、昨年3月末に市の文化体育振興事業団が解散。ひこね市文化プラザの運営は、NPOとビル管理会社と経営コンサルタント会社の共同事業体に移行した。このため、オケの位置づけが曖昧になり、本年2月は辛うじて演奏会を開催できたものの、来年の見通しは立っていない。
 市の委託料とチケット売上に加えて多くの利害関係者が絡む問題だが、単純化するとエコメモオーケストラとしては、演奏活動が経営的に成り立つのかという問題になる。
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もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら
 若林さんが「私たちの弱みは、彦根にいてマネジャーの役割をする人がいないことだ。」といった時、唐突に、ベストセラーの「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」を思い出した。
 主人公の野球部女子マネージャーみなみが、チームから浮いている監督の加地を機能させようとして、「マネジメント」の中に監督そっくりなキャラクターの説明を見つけるくだりだ。それは「専門家」についての引用だった。

 「専門家にはマネジャーが必要である。自らの知識と能力を全体の成果に結びつけることこそ、専門家にとって最大の問題である。専門家にとってはコミュニケーションが問題である。自らのアウトプットが他の者のインプットにならないかぎり、成果はあがらない。専門家のアウトプットとは知識であり情報である。彼ら専門家のアウトプットを使うべき者が、彼らの言おうとしていること、行おうとしていることを理解しなければならない。
 専門家は専門用語を使いがちである。専門用語なしでは話せない。ところが、彼らは理解してもらってこそ初めて有効な存在となる。彼らは自らの顧客たる組織内の同僚が必要とするものを供給しなければならない。このことを専門家に認識させることがマネジャーの仕事である。組織の目標を専門家の用語に翻訳してやり、逆に専門家のアウトプットをその顧客の言葉に翻訳してやることもマネジャーの仕事である。」(P92-93))


 確かにコミュニケーションが問題だと思う。本日の参加者でもエコメモオーケストラを初めて知った人がほとんどだ。
 そして、強みは、まさに「専門家」であることだ。プロとしての知識と能力をどう全体の成果に結びつけるか。それは演奏を基本に、もっと広い視野から考えられるのではないだろうか。
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 小説では、みなみは「マネジメント」を読んで、現在の顧客に満足を与えるマーケティングに取り組み、次に、これまでのやり方を変えて明日の顧客に新しい満足を生み出すイノベーションに取り組んだ。現実は物語のように単純ではない。また、ドラッカーのマネジメントは、1975年刊行の35年前の著作であり、部分的に修正が必要だ。
 しかし、若林さんは、自分たちの強みと弱みを正確に理解している。現状を把握し、問題を再定義して、2つの考え方のもとに顧客が本当に音楽を聞いたという満足が得られる場づくりを計画していければ、道は開けると思う。(By E.H)



次回の「それぞれの彦根物語」は、7月17日(土)10:30~12:00 @寺子屋力石

彦根市観光の現状と今後
    ~3年間にわたる経済効果測定調査から~

      得田 雅章さん(滋賀大学経済学部准教授
 

 (彦根市観光の経済効果測定調査が2007年から毎年実施されています。今年秋にもアンケート調査を予定しています。これらの調査結果から浮き彫りになる彦根観光の現状とは? 課題と対策は? ひこにゃんの今後は? 調査担当者として、また一彦根市民として愛をもってお話させていただきます。)
by hikonekeikan | 2010-06-27 12:45 | 談話室「それぞれの彦根物語」
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